【出前授業】子どもたちと輪になる【トーキングサークル】

『こんな風に話すことを「つながり」っていうんじゃないかなって思いました』

tomoni.が大切にしている活動のひとつ、「トーキングサークル」。
それって何?って問われるたび、実は僕は、いつも返答に困っている。

あの時間をなんと伝えれば、目の前の人がわかってくれるのかがわからなくて。

輪になって座る。

安心をつくるためのサークルのルールを置いて、トーキングピースと呼ばれるぬいぐるみや石を、手に取って一人ずつ話す。
ピースを持った人が話し、他の人は聴く。
テーマや問いがあれば、そのことを話す。
パスもありで。

そんな風に説明しながら、そうなんだけどさ、そうなんだけどそうじゃない、といつももどかしい気持ちになる。

あれは、こういうやり方の話じゃない。

そんなんじゃなくて、もっとダイナミックで、個性的で、唯一無二で。

ひとのいのちのかけらが一瞬きらめくみたいな、うつくしい時間だって、思う。

秋から冬に変わる、11月の末と12月のはじめ。

数人の仲間と一緒に、兵庫県のある小学5年生に、気持ちとニーズの授業とトーキングサークルを届けた。

もう5年生だから、子どもたちからすると周囲は馴染みの顔。
今更自分の話をするなんて気恥ずかしかったかもしれないし、関係の薄い同級生の話をどうやって聞いたらいいのか戸惑った人もいたかもしれない。苦手な人や喧嘩した人が近くにいたかもしれない。

それでも子どもたちは、僕らと大きな一つの輪になってくれた。

照れ隠しにふざける子。
三角座りの膝に顔を埋める子。
俯いて小さな声でさっと話す子。
少し迷ってパスする子。

緊張感と不安と期待と好奇心が淡く漂う中、サークルキーパーが部屋に散って、5つの小さな輪になる。

サークルの詩を読んで静寂が部屋に降りたあと、キーパーの声が部屋に響いた。

面白いことに、なぜかサークルにはカラーがある。

静かで様子を窺うグループもあれば、僕も私もと話したがるグループ。
ニーズカードを渡すことが楽しくてどんどん渡すグループ、じっと考えて恐る恐る渡すグループ。
じっとするのが苦手で寝転び始めたり、倒立とか始める人も。

でも、耳はこちらを向いている。
感情やニーズを選んで、仲間に共感する段になると、するっと参加してくる。
君たち、その姿勢でもそんなに聴いてたん?と驚いて笑ってしまいそうになる。
賑やかな見た目に惑わされて「聴いてないんじゃない?」なんて不安になってしまう自分が試される。

『話は座って静かに聴きなさい』『黙って聴きなさい』『輪を崩してはいけない』『頷いたり微笑んだりして聴いてると示さねばいけない』そんな無意識の思い込みがどんどん刺激される。

その声に焦って、コントロールしたくなりそうになる。

でも違う。

人が集う場は、起こる必要のあることがきっと起こる。
その人の内側で、何かが芽吹いている。
そう信じて、揺れながら一緒に座る。
いつもサークルでは、自分との戦い。
元気なひとたちと一緒に2日間過ごしてみて、きっとそれぞれの物語があったんだろうと思う。

後日届いた感想が、その一端を教えてくれた。

『楽しかった、また6年生でもやりたい』
『自分が発表した時、みんながしっかりきいてくれてうれしかった』
『心の気持ちをいったらすっきりした』
『気が楽になった』
『時間があっというまにすぎたからまたいっしょに勉強したい』
『感情は生きるのに必要だと思った』
『こんな風に話すことを「つながり」っていうんじゃないかなって思いました』
『人の心は傷つきやすいし、世の中で一番大切なものじゃないのかなと感じられました』
『気持ちにただしいとかまちがってるとかがないってわかった』
『みんなの幸せを知る、聴く力』

そんなこと考えてたん!!!とキーパーのみんなで驚いて喜んだ。

ほんとうにたくさん受け取ってくれている。
言葉にするのが苦手な人もいるだろうし、もちろんピンと来なかったり気まずかったり居心地悪かったり退屈だった人もいただろうと思う。

それでも、1年の中のたった2コマの時間が、そっと心の隅に残っていたら、と祈る。

人は、真実に触れると涙が出るらしい。

僕は子どもたちとのトーキングサークルのことを思うと、いつもじわっと涙が滲む。

ほんとうを語ろうとするその姿が堪らなく素敵で、人がそのままであるということの尊さとかけがえのなさを、自分のぜんぶで守りたいって魂が叫ぶ。

この景色が溢れてほしい。

学校にも、家庭にも、会社にも、社会にも、語る声にやさしく耳を傾ける風景がたくさんたくさん見たい。

いつか、輪になんてならなくても、ピースなんてなくても、その人の声がそのままで大切にされる世界があまねく広がるように!!!って、こころが切望する声がする。

トーキングサークルは、目の前の人、半径5メートルの取り組みだ。

それでもその小さな世界に、可能性がぎゅっと折り畳まれている。

「もしかしたら、人がそのままで大切に大切にされる世界が来るんじゃないか」と、予感を感じさせてくれる。

たいせつなことを、言葉を尽くして説明するってすごくむずかしい。

大事だから少しもこぼしたくなくて、いっそ書くことを諦めそうになる。
でも、不完全でも、わからなくても、確かにそこに大事なものがあるんです。

その事実をただ知ってほしくて、そのうつくしいものはこの世界にあると知っていると言いたくて、なんとか書いてみました。

全ての声は大切で、だめなことも、まちがってることも、ないんだよ。
聴き届けられることを待つ声を迎えに、僕らはこれからも、子どもたちに会いに行きます。

ヒロ

#愛を叫べ
#違いは間違いじゃない
#かけがえのない美しいギフトだ
#違いが豊かさになる社会に
#ありのままの存在が慈しまれる関係性へ

tomoni.

「なにひとつおいていかない」ことをコンセプトとする対話・場づくりユニット。性の多様さを含めたあらゆる違いを豊かさに。内側の感情や声を丁寧にひろい、すべてを含んで共に生きることを目指します。

0コメント

  • 1000 / 1000